10月20日(月)19:30と翌日の千秋楽15:00公演を新宿のSPACE雑遊で観ました。
映画・歌謡曲にもなっている長谷川伸の歌舞伎の戯曲(昭和6年)が有名ですが、これをモチーフにした金杉忠男のアングラ全盛期の作品です。
舞台は下町・葛飾にある男性客を相手に商売をしている風呂屋、そこで働く女将(勝島乙江)と4人の風俗嬢、そして店を訪れる男たちの物語です。
女将に情けをかけてもらった恩返しに25年ぶりに店を訪れた男(辻親八)、妻がいるのに足しげく店に通う夫、怠惰な日々を過ごしている2人の客、ライバル店に雇われ店を潰そうとやって来るヤクザが登場します。
4組の会話で場面は展開します。
男と女将の会話は迫力があり見ごたえがあります。久しぶりに舞台に立った勝島乙江(青年座)はベテラン・辻親八を相手に堂々の演技でした。セリフ術も巧みで、立ち居振る舞いも美しく、存在感がありました。長谷川伸の戯曲と同じく最後の場面で男は土俵入りを見せます。
夫婦の会話は別れるとか死ぬという深刻な内容なのになぜか(2人の演技で)コメディの雰囲気に包まれています。
2人の男の会話は有名な不条理劇「ゴドーを待ちながら」を思わせます。
「今日は来られない」というゴドーのことばを伝えに来たのは鉄腕アトム(の姿をした男の子)でした。
ロープを使って空を飛ぶ姿には拍手を(しませんでしたが)送りたかったくらいです。
「今日は来られない」理由を男の子は「海水を入れているから」と説明します。福島原発事故の風刺のようです。
長谷川伸の戯曲の主人公・茂兵衛の故郷が福島県駒形村というつながりでしょうか?
ヤクザは風俗嬢にからかわれながら頼りない男を滑稽に演じていました。
4人の風俗嬢は昭和歌謡を歌い踊り、風呂屋の業界用語をしゃべりながら、舞台を明るく盛り上げています。
長谷川伸のあらすじは・・・駒形村の茂兵衛は、立派な横綱になって母親の墓前で土俵入りの姿を見せようと相撲部屋に弟子入りするために水戸街道を江戸に向かいます。しかし道中で無一文になり空腹で宿場町・取手にやって来ます。宿の2階から声をかけた酌婦・お蔦は、茂兵衛の身の上話に心を打たれ、持っているお金全部と櫛・かんざしまで茂兵衛に与えます。そして10年後、渡世人となった茂兵衛は恩返しにお蔦を訪ねて来ます。
歌舞伎の幕切れで茂兵衛がいうせりふは観客の涙を誘いました。
また、昭和32年の映画でお蔦を演じたのは宝塚OGで日本を代表するシャンソン歌手となった越路吹雪でした!
|