虞美人 花組 平成22年5月6日(木)18:30 東京宝塚劇場

画像をクリックすると拡大します

5月6日(木)18:30公演を観ました。
力いっぱい悪口を書いたので、これから公演を観る方は以下は読まないでください。

正直に言って期待はずれでした。
宝塚初めての1本立ての大作でかつて大ヒットした作品です。
普段ポスターが掲示されることのない駅にまで張り出され宣伝にも力が入っていました。
期待も大きかっただけにがっかりも大きいです。

項羽(真飛聖)は容赦なく敵を殺します。
戦乱の時代の武将ですから、それ自体は主役の造形として何ら問題はありません。
しかしあまりにも“あっさり”と殺しています。
殺す側と殺される側の背景、対立や葛藤がもっと丁寧に描かれないと説得力のある場面にはなりません。
観客はただポカーンと観るだけになります。

虞(桜乃彩音)は単に項羽のそばについているだけで存在感のある人物として描かれていません。
トップコンビなのですから、何処かにドラマチックなイベントを描いてほしいです。
また何の伏線もなく、最後にいきなり自害してしまいます。
戦場に行けば足手まといになることは初めから分かっています。
虞の心境にどのような変化があったのでしょうか。
これでは観客は違和感を感じるだけで何の感慨も湧きません。

劉邦(壮一帆)は項羽とは対照的な武将のはずです。
人心をつかみながら無駄な戦いを避け最初に都に入ります。
しかし、酒好き女好きのただの遊び人のような造形で、武将としての賢明さや勇ましさがまったく感じられません。

有名な故事、韓信(愛音羽麗)の股くぐりも、あっさりと描かれています。
これでどうして観客に「韓信の偉大さ」が伝わるのでしょうか?

ちょっとしたセリフにまでメロディを付けています。
ほとんど意味がないと思います。
感情を込めてストレートにセリフを話す方がドラマチックです。

大河ドラマのような作品ですので多くの人物を登場させそれぞれイベントを描くのは分かります。
しかし核となるテーマが不明確なまま散漫な展開が続きます。
項羽と虞、ふたりの愛と死、その悲劇性をテーマに焦点を絞れば一つのメインストーリーになります。
また、どうして冒頭に劉邦の臨終の場面が必要なのでしょうか?

これらは生徒の演技の問題ではありません。
今回「脚本・演出・音楽・装置・衣装すべてを刷新した」そうですが、基本的には木村信司先生の脚本・演出の責任だと思います。

上手後方の客席からいつも最初に力一杯拍手する音が聞こえます。
サクラでしょうか? 拍手の強要も興ざめです。

悪口ばかりでしたが、最後に一つだけいいことを書きます。
男役の望海風斗が、項羽を父の仇と恨む桃娘の役で登場します。
童の姿になって項羽のもとへ潜り込みますが、娘役のように可愛かったです。
背が高いので転向はしないでしょうが。
このサイドストーリーだけは良かったです。

もう一度観ると上に書いたような感想が変わるでしょうか?
5月25日に2回目を観る予定です。5月25日の感想はこちら。


トップページに戻る    観劇リスト2010に戻る